PTH(パラソルモン)が正常範囲の透析患者に医師が、間違えてレグパラ(シナカルセト)を処方した話。
PTHって知ってますか。
パラソルモンってものですけど、たまに、血液検査でとりませんか?
これは、骨からカルシウムを取り出して、血液中のカルシウムを保つ役割があるんです。
カルシトニンってのが、逆・・・カルシウムを骨に取り込ませる働きがあります。
PTHが高いと、骨粗鬆症(骨がスカスカ)になります。
これは、骨からPTHの働きでカルシウムが離れて行くからです。
PTHが低くても、骨を壊して、造り直すというサイクルが崩れて骨が折れやすくなります。
(簡単に説明できないみたい・・・難しい、わかったら、書き直します)
2012年のガイドラインでは(日本透析医学会)
PTHは60~240pg/mlの間に維持するのが望ましいとされています。
(以前は60~180でした、管理が厳しすぎるという意見が多く、改正されました)
日本透析医学会の統計調査で180pg/ml未満だと
1年後、3年後の生命予後が良好というデータがあり、
それを参考にして決めたということです。
普通の健常人は、10~65pg/mlなので、
透析患者と健常人で数値が違います。
私が以前に勤めていた病院は、外部発注の検査を使用していました。
送られてきてる検査結果の正常範囲の項目は健常人のものになってるんですね。(紙で送られてきてました)
普通は、知ってて当たり前なのかもしれないんですけど、
その時に、透析室を回診していたのが院長の息子(Dr.)だったんですね。
その先生は泌尿器が専門でして、透析はそんなに詳しくなかったみたいです。
PTH-intactが120pg/mlとか100pg/mlとか、
コントロール良い人に対して
全て、検査結果に記載されている健常人の正常値の範囲で
判断していたようで
レグパラ(シナカルセト)を処方して回ってました。
その時、回診についてたのは他のスタッフでした。
私は回診についていないので
それほどじっくりは
見ていなかったのですが
ふと、一人の患者さんの数値を見たときに
処方と検査値が合ってないことに、私は気づきました。
↓レグパラの説明 ざっくり。
レグパラって、PTH下げる薬です。
二次性甲状腺機能亢進症という病気は
透析に関わる方は聞いたことあると思います。
副甲状腺からPTHが出過ぎてしまうというものです。
この病気は、
体の中のカルシウム受容体(いわゆるセンサー)がにぶくなっていて、
体にカルシウムがどんなにたくさんあっても、
センサーが感知しないから
カルシウムがいつも足りないという情報が
副甲状腺に送られています。
レグパラ(シナカルセト)はカルシウム受容体にうまく入るようになっています。
カルシウム受容体に
レグパラ(シナカルセト)が入ると
受容体はカルシウム足りていると判断して
副甲状腺に
PTHを出さなくてもいい、という命令を出します。
カルシウム足りてるから、PTHなんて出さなくっていいか・・・
ちょっとにしておくかってことで、PTHが下がります。
胃にもカルシウム受容体があるんで、
そこにも、レグパラ(シナカルセト)が入ってしまうので
胃の不快症状が副作用にあります。
でも、それは
胃薬でなんとかなるレベルの副作用です。
私は、臨床経験がそんなにありません。
少なくとも、主任たちよりは
そして、役職もなにもなく
色々なものに破れてこの別棟にいるわけで
立場的にそんなによくありません。
私は主任に言いました。
しかし、
その先生は本館の透析患者さんも回診をしていました。
診た患者さんは全員が全員、その指示で、
別棟だけの話ではありませんでした。
20年以上働いている看護師も、臨床工学技士も、
自分の同期も
誰ひとり、この数値に気づいたスタッフはいませんでした。
主任たちが、
その先生に伝えて、
他の先生にも応援を頼んで
処方が全部出し直されました。
そのまま出されてたら、透析患者さんに被害が出てましたよね。
とりあえずは、めでたしめでたしでした。
透析患者さんには
いい迷惑ですよね。
リンやカルシウムのコントロールは
ただでさえ難しいですよね。
それを
病院側のミスで
どうにかしてしまうのは
最悪です。
この病院では
リンが高いとタンパク質を控えるように
という説明を
看護師がしているのを
見かけたこともありましたから。
何を食べればいいのかわからない
そんな患者さんの
訴えも
耳にすることもありました。
少なくとも
病院側の落ち度で
苦しませることがないようにしたいです。
食事が不安になったり
負担が大きくなりすぎた場合
宅配サービスで、すこし負担を減らすこともできます。
選択肢の一つとして覚えておいてください。